カセットテープの歴史について

カセットテープの歴史について(後半)

カセットテープはオワコンなのか

【カセットテープとはすでに終わった媒体なのか?】
カセットテープとは何か、見聞きしてはいても、それを実際に触ったことがある人の割合は、この時代になって徐々に減ってきています。新たにプレーヤーを開発する会社は皆無と言って良いですし、実際にカセットテープを手に入れるのも難しくなっています。だからといって、カセットテープはすでに終わった媒体なのだと結論付けることはできません。

 

というのも、カセットテープを扱うお店が今なお存続しているばかりか、新たにカセットテープを取り扱うお店も出てきているからです。こうしたお店を訪れる客は、昔を懐かしむ人だけではなく、若い女性や外国人観光客、音楽関係者などで、様々なニーズを持ってやって来ます。まさにカセットテープの人気が再び高まっている状態で、とてもカセットテープとは終わった技術であるとは言えないのです。

 

【カセットテープのメリット】
こうした現象が起きているのは、カセットテープならではのメリットがあるからです。その一つに、意外にも使いやすさが挙げられます。スマホで簡単に音楽が聴ける時代になっていますが、アプリを開いて、アルバムを選んでタップするという動作と、テープを聴くための動作には、それほど大きな違いはありません。テープの場合は、プレーヤーにカセットを入れ、再生ボタンを押すだけだからです。もちろん、カセットを選ぶ必要があったり、曲の頭出しができなかったりなどはありますが、音楽をかけるだけであれば簡単で、カセットテープとはとても楽な音楽メディアだということが分かります。

 

そして、今なお多くの人がカセットテープを利用する目的としているのが、独特の音質です。いわゆるデジタル音声と比べて、柔らかく厚みがあり、太い音がするという感想を述べる人が多くいます。もちろん、これは好みや音楽の種類によって、合う合わないがあります。しかし、デジタル音源では出ない音質があることは事実です。

 

また、カセットテープとは形あるものなので、コレクションできるというメリットもあります。カセット一つずつにタイトルやアーティスト名を記入し、陳列しておくことで、聞きたい時にカセットを探して取り出し、プレーヤーに入れるという過程が生まれます。単に音を聞ければ良いということではなく、音楽のコレクション欲をも満たしてくれます。それが、より音楽への愛や情熱を駆り立ててくれるというわけです。

カセットテープとは劣化するもの

【カセットテープとは長持ちしないという認識を】

 

昔懐かしい音楽、様々な家族のイベントや大事な会話など、カセットテープに録音して保管している人は多くいます。たまに取り出して聴くこともあり、できればずっと長く保存しておきたいと思うでしょう。しかし、カセットテープとは次第に劣化してしまうものなので、大事な音声や音楽が聞けなくなってしまう前に、必要な措置を取ったほうが良いです。

 

というのも、カセットテープとは磁気を帯びたテープにデータを記録している仕組みであるため、そのテープが悪くなると音を正確に再生できなくなってしまうからです。テープは温度変化によって収縮したり膨張したりします。それを繰り返して伸び切ってしまうこともありますし、逆に縮んでしまうこともあります。カセットのガイドやパッドがテープの同じところに触れたままで、そのままくっ付いてテープが回らなくなるという現象も生じ得ます。さらには、近くに置かれた磁石や電気の影響で、磁性が狂うこともあるのです。

 

テープ表面にホコリが付いてそれが腐ってくるとか、湿気でよれてしまうという事態も珍しくありません。他にも、テープの巻き跡がそのまま残ってしまって、その部分を再生すると音が悪くなるのもよくあることです。

 

このように、カセットテープとは次第に品質が落ちてきて、最終的には使えなくなります。メーカーによると、一般的なカセットテープの寿命は30年とされています。

 

【少しでもカセットテープの寿命を伸ばすために】
特に注意しないでいると、カセットテープはどんどん劣化が進みます。大事な思い出をできるだけ長く保ちたいのであれば、保管方法に気を付けるべきです。

 

まず、高温多湿の場所を避けて、冷暗所に保管しましょう。日光が当たりやすいところではなく、日陰に置いておく必要があります。これにより、テープの大敵であるカビを防げます。また、極端な温度変化による劣化を遅くできます。

 

次に、ホコリがかからないところに置くことが大事です。取り出しやすいように棚の上などに保管する人もいますが、ケースの中に入れるなど、ホコリを防ぐ工夫が必要です。

 

そして、磁気不良を防ぐために、磁気が強いものからは遠ざけてください。文房具やキッチン用品には磁石が使われているものが多いので、気を付けましょう。このような配慮をしても、やはり劣化とカセットテープとは無関係でいられません。

カセットテープとは切っても切れない関係のメーカー

【カセットテープとは深い関係にある日本メーカー】

 

長い間、音楽シーンを形作ってきた技術や家電製品と言えばカセットテープ、そしてラジカセデッキです。音楽を聴くために多くの家庭にあったものですし、一時期はどの自動車にもカセットデッキが搭載されていました。それだけに、カセットテープとは家電メーカーにとって非常に重要な商品だったのです。

 

日本のメーカーでカセットテープとは?と聞かれたら、まず挙がるのが日立マクセル社です。1960年代にヨーロッパのフィリップス社が開発したコンパクトサイズのカセットを、日本において初めて製造、販売したのが日立マクセル社だからです。その後もたくさんの優秀なカセットテープのシリーズを開発して、低価格で買いやすい商品、高音質で音楽ファンの人気を集めたテープなどを販売してきました。商品ラインナップが減ったとはいえ、今でもカセットテープを生産し続けています。

 

そして、もう1社、カセットテープとは切っても切れない関係にある企業と言えば、ソニーでしょう。もともとソニーは家電メーカーとして、世界的に見ても高いシェアを伸ばしていました。そのソニーが、フィリップ社にカセットテープの特許の無償利用を要請したとされています。そのおかげで、世界中にカセットテープが広まったのです。当然、ソニーも様々なシリーズのカセットテープを製造してきましたし、ラジカセデッキも人気商品を飛ばしてきました。特に有名なのがウォークマンです。小型でどこにでも持って歩けるデバイスということで、画期的なアイディアと技術力は世界中の人々に支持されたのです。

 

TDKも、カセットテープとは非常に深い関係がある企業です。音楽専用のカセットである「SD」というシリーズを販売して、大きな人気を博しました。このSDのおかげで、高音質のテープというジャンルが存在するようになったと言っても過言ではないでしょう。

 

【その後の音楽関連技術に大きな影響をもたらした】
音声録音並びに再生の媒体やプレーヤーはその後、MDやCD、DVD、MP3プレーヤー、スマホといった形で、急速な勢いで進化を続けていきます。そして、カセットテープを利用する機会が減っているため、テープの音源をDVDコピーすることによって保存する人も増えています。

 

それでも、カセットテープがCDやMP3による音楽録音や再生の進化の礎となったことは確かであり、歴史の中で記憶され続けるべきであることに間違いありません。デジタル録音のベースとなる、磁性による音の記録や再生、一時停止、早送り、巻き戻しといった、操作の基本原則を作ったのはカセットテープです。

デジタル化する人が増加!残すべきカセットテープとは

【残しておきたいカセットテープとは?】

 

今やカセットテープを新たに購入し、音楽や音声を録音して聴く人は少数派となっています。一部のコアな音楽ファンや、使い方に慣れている高い年齢層の方たちに支持されているくらいです。しかし、家の中を探してみると、カセットテープのコレクションが見つかる家庭は少なくないはずです。

 

そして、よくよくそのコレクションを見てみると、今では手に入らない貴重なカセットテープ、ずっと残しておきたい音源があるものです。貴重なカセットテープとは、現在ではすでに廃盤となっていたり、活動が終わって音源を手に入れられないグループや歌手の曲が入っていたり…インターネットでも見つけられない音源が、自宅のカセットテープの中にあったということは珍しくありません。

 

ずっと残しておきたいカセットテープとは、昔の音声が収められているものです。たとえば、おじいちゃんや親が残してくれたボイスメッセージが挙げられます。他にも、各種イベントの様子を残しておこうと、カセットテープでその場の音を録音しているケースもあります。昔の大事な思い出という貴重な財産は、いつまでも残しておきたいものです。

 

【カセットテープをデジタル化する】
カセットテープとは、テープに磁性を帯びさせることによって音声を録音する仕組みのツールです。そのため、劣化しやすいのが弱点です。経年劣化によって、テープが伸びたり切れたりすることがあります。また、近くに磁石などを置いてしまうと、テープの磁性が崩れて音が狂うこともあります。貴重な音源が入っているカセットテープとはいえ、保管には場所を取るため、いつまでもそのまま持ち続けることができないという事情をお持ちの方もいます。

 

そこで、カセットテープの音をデジタルツールに移して保存する人が増えています。カセットテープデジタル化もその一つの方法です。最近は、カセットデッキの音をUSBで出力できるツールが販売されています。普通にカセットテープを再生して、その音をパソコンに取り込めるのです。そのままその録音データをCDに焼くだけですので、とても簡単にできます。

 

もし、パソコンを使うのが得意ではないとか、新たにUSB接続できるデッキを買うまでもないということであれば、専用業者にカセットテープデジタル化を依頼するのも一つの手です。カセットテープを指定の住所に送付すれば、DVDに焼いてくれて自宅まで送り返してくれるといった、便利なサービスを提供しています。

カセットテープとはデジタル音源にできるものなのか?

【魅力的な音質が人気のカセットテープとは?】

 

音楽を聴くためのツールと言えば、今では多くの人がスマホを使っています。サブスクタイプのサービスで、好きな時に好きな曲を簡単に聴くことができます。スマホ1台あればたくさんの曲を保存できて、どんな場所でも聴けることもメリットです。

 

スマホが登場するまでは、MP3プレーヤーやCDが主流でした。これらのツールはいわゆるデジタル音質と呼ばれていて、デジタル信号で記憶したデータを再生する仕組みです。しかし、さらに一つ前の時代のカセットテープでは、アナログ形式でのデータ記録がなされていました。そのため、当時聴いていた人たちは、今聴くデジタル音声と昔のカセットテープとは音の聴こえ方が違うと言います。実際にカセットテープで録音した音を聞くと、ソフトで音の厚みが大きく感じられます。もちろん、クリアさやシャープさはデジタル音源のほうが優れていますが、デジタル音源にはない魅力があるため、今でもカセットテープを好んで聴く人がいるのも納得です。

 

【デジタル音源に変える】
カセットテープとは、その独特の音質が魅力の媒体です。しかし、気軽に聴くにはやはりデジタル音源に変換するのが一番です。この変換作業はいくつかの方法があり、いずれも実際に可能ですので、手持ちのカセットテープをデジタル保存してみましょう。

 

今持っている機器を使って手軽に作業したいのであれば、パソコンとカセットデッキだけでも可能です。カセットデッキの出力端子からパソコンのマイク端子につないで、カセットデッキでテープを再生します。パソコン側に音楽編集ソフトを入れて録音をすれば、そのままデジタルデータとして保存できます。この方法でデジタル方式で録音された音源ではカセットテープとは違う音質を感じて、テープの良さを再認識できるでしょう。

 

もう一つ、カセットデッキにSDカードなどを挿して録音できる機器を購入する方法があります。わざわざ新しくデッキを買わないといけないですが、パソコンに接続する必要はなく、デッキにSDカードを入れてテープを再生するだけなので、作業はかなり楽になります。

 

保存したデータはパソコン上に置くこともできますし、デジタル化しておくこともできるでしょう。CDだとカセットテープ音源のみをまとめて保管できるので、整理しやすくなるというメリットもあります。大事なカセットテープとはいえ、ずっと保管し続けるのが難しいという事情もありますので、これを機に、デジタル化を考えてみてもよいのではないでしょうか。