CDの歴史について(前編)

世界で初めてのCDは?CDの歴史を紐解く

【日本が大きくかかわったCDの歴史】

 

音楽メディアとして、また記録用媒体として、非常に重要な役割を演じたCDの歴史には日本が大きくかかわっています。CDの歴史の始まりは1965年にさかのぼります。すでにレコードなどの音楽を録音するためのメディアが世界中に浸透していて、さらに高音質でコンパクトな媒体の開発が期待されている時です。この年にジェームス・ラッセルというアメリカの発明家が、光学式のメディアを発明しました。それまでは溝や凹凸という物理的な信号の違いによって記録を行っていましたが、この発明によって新たなメディアテクノロジーが幕を開けたのです。

 

そして、1960年代のうちに日本のトップ企業であったソニーとフィリップス社が、この分野における共同開発をすることを決めます。その後、1979年に本格的な新しい光学システムのメディア開発を始めることを発表します。1981年にはドイツにおいて、ついにテスト用のCDが完成し、実用化に向けてスタートを切ります。翌年にはソニーなどから、世界で初めて一般向けの市販CDが発表されることになります。CDの発売の際には有名な楽曲が録音され、最初の生産はビリー・ジョエルの「ニューヨーク52番街」でした。このように、CDの歴史を見てみると、その開発や製造、販売においては日本が大きくかかわってきたことが分かります。

 

【CDの名称が決まった背景】
CDの正式名称は「コンパクトディスク」です。この名称は、ソニーと共同開発したフィリップス社の主張が大きく関係しているとされています。フィリップス社はすでにLDつまりレーザーディスクを出しており、LPと呼ばれるレコードの大きさに近い、直径30センチのサイズでした。このレーザーディスクと比べて、はるかにコンパクトなメディアということで、コンパクトディスクという名称を採択したのです。CDのサイズ規格は12センチで、自由に携帯できるサイズとなっています。

 

今まで主流だったLPやLDは、自宅に保管しておくのは問題ないものの、携帯するのは難しいサイズでした。また、ディスクが大きいため、プレーヤーも大きくせざるを得ませんでした。その点、12センチしかないCDであれば、すべての点でコンパクト化でき、より多くの人に、より多くの場所で使ってもらえます。こうしたことから、音質の良さだけでなく、小さなサイズという面を強調した名称が付けられたのです。

 

後に、同じサイズでDVDが誕生することになり、現在でもDVD録画などに広く用いられるメディアの先駆けとなります。

音楽用ディスクの変遷

【音楽メディアとCDの歴史】

 

現在では音楽メディアと言えばスマホが主流になり、専用の音楽メディアというものを使わなくなっています。しかし、それまではディスクやカセットなど、音楽を録音し、再生するための専用の媒体が必要でした。その変遷を知ることで、音楽メディアの中でも特に重要度の高い、CDの歴史を垣間見ることができます。

 

音楽メディアの始まりは、歴史上最も偉大な発明家と言われるトーマス・エジソンの作った蓄音機だとされています。最初の実用化は、実に1877年にまでさかのぼります。クランクを回すことによって、ロウ管と呼ばれるワックスシリンダーに記録された音をなぞり、音楽を再生する仕組みでした。

 

その後、テープに信号を記録することで音楽を再生する仕組みができます。1930年代にビニールテープを使ったメディアが実用化され、1940年代にはヴァイナルと呼ばれる、今までよりもずっと長い時間録音できるテープの方式が開発されたことで、多くの国に広まっていきます。そして、1963年に磁気テープをカセットに入れ込んだカセットテープが登場すると、音楽シーンが一変します。簡単に音楽を録音・再生できるようになり、世界中で爆発的な支持を得ました。

 

そして、今までのテープ式のメディアから大きな変化をもたらす、CDの歴史が次に始まります。ソニーとフィリップスによって開発されたCDは、1982年に市販が開始されました。光学式のディスクは高音質で大容量、コンパクトであることから、テープに取って代わり、CDの歴史となっていくのです。

 

【その後の音楽メディアの移り変わり】
デジタル音源という新しい道を切り開いたCDですが、さらに技術が進み、いくつもの音楽メディアが登場します。MDもその一つで、カセットの中により小さなディスクを納めたものです。しかし、MDの時代は長く続きませんでした。というのも、1990年代後半になるとMP3が登場するからです。同時に、インターネットの普及も一気に進んでいきます。

 

MP3は新しいタイプのオーディオファイルで、オンライン上での配信や再生に優れています。そのため、音楽は物理的なメディアではなく、インターネットから入手するという流れになっていきます。AppleがiPodを2001年に発売すると、その勢いは加速して、ディスクを持ち歩くことなく、いわばプレーヤーのみで音楽を聴けるようになる時代が訪れたのです。

レコードからの移行

【音楽を身近にしてくれたレコード】

 

レコードは、音楽を人々にとって非常に身近にしてくれた、大きな存在と言えるでしょう。というのも、1900年代に円盤レコードが実用化されるまで、音楽はホールに行かないと聴けないものだったからです。すでに蓄音機が登場していましたが、蓄音機は異なる楽曲をいくつも聴けるものではなかったので、いつも同じ音しか楽しめませんでした。しかし、レコードが登場してからは、新しいレコードを買えばいくらでも新しい曲を聴けるようになります。しかも、ホールに行かなくても、自宅で好きな時に楽しめるのです。

 

こうした可能性に注目したメーカーが、レコードプレーヤーとレコード本体を大量生産する体制を整えたことによって、世界中にレコードが普及しました。すなわち、気軽に音楽を楽しめる環境が世界中に広まったことを意味しています。

 

【レコードの衰退とCDの歴史の始まり】
レコードの果たした役割は非常に大きいのですが、技術の進歩によって衰退し始めます。まず、ラジオの普及です。自分でレコードを買わなくても、ラジオで音楽が流れてくるわけですから、人々はそちらのほうを好むようになります。しかも、ラジオはコンパクトなので、外出先でも聴けます。続いてカセットテープが登場し、一気にレコードの時代は終わりを迎えるわけです。

 

次に、CDの歴史が始まります。12センチというコンパクトなサイズで、プレーヤーもディスクも持ち運びできますし、自動車の中で聴くこともできます。また、レコードのようにイチイチ針を合わせる必要もなく、簡単に操作して聴けます。

 

また、デジタル音源によって、よりクリアで再現性の高い音楽となったことは、レコードだけでなく、カセットテープと比べても大きな変化です。いわば、CDの歴史のスタートがレコードの終焉を決定づけたと言っても良いでしょう。音楽はアナログ音源からデジタル音源へと大きくシフトしたわけです。

 

CDの歴史とレコードの関係において、CDでは自分で録音できるようになったという点も大きいです。カセットテープではすでに録音が可能でしたが、プロレベルの音質で音楽を録音できるCDは、今までの音楽事情を変えるインパクトがありました。

現在と将来

【CDの歴史と音楽メディアの変化】

 

CDの歴史を振り返ってみると、今までどのように音楽メディアが進化を遂げてきたかが分かります。音楽メディアの誕生は、蓄音機およびLP盤と呼ばれるレコードから始まったと言えるでしょう。それから、オープンリール、カセットテープと来て、CDの歴史が始まります。その後、MDやDVDなどが出てきて、MP3に取って代わります。

 

こうした変化を見てみると、まずは音楽メディアとプレーヤーの小サイズ化が起こっていることが見て取れます。より小さく、持ち運びできるサイズになって、より音楽が身近なものとなっていくのです。自宅に置くしかなかったものが、自動車に装着できたり、ポケットサイズになって歩きながらでも音楽を聴けるようになったりしました。

 

また、音質の向上の進歩も顕著に見られます。特に、CDの歴史の始まりにおいて、カセットテープまでのアナログ音源からデジタル音源へ移行したことは大きな変化でした。音楽メディアが小さくなったことや、自分で録音できるようになった点も関係していますが、誰でもいつでも簡単に音楽が聴ける時代になり、気軽さや便利さも高まっているのが特徴です。

 

【現在とこれからの音楽メディア】
現代になり、その傾向が強まります。MP3の登場により、ディスクやテープなどの記録媒体がプレーヤーと一体化したのです。ネット上からダウンロードすれば、音楽メディアそのものを買わなくて済むので便利です。インターネット回線の向上によって、高音質の音楽をすぐに入手できる状態となっています。

 

さらに、サブスクリプション形式のサービスが開始され、音楽事情は一層の進化を遂げます。音楽ファイルのダウンロードに代わり、今では多くの人がストリーミング配信で聴いています。手元に音源自体を持たなくても良くなり、より身軽になりました。

 

将来、こうした気軽さや便利さが進み、スマホなどの媒体から、さらにコンパクトなツールになる可能性があります。音楽メディアは常に進歩し続けてきました。これからもその流れは続くことでしょう。

 

他方で、時代が流れても、一定の層から変わらない支持を得ている音楽メディアもあります。レコードのアナログの音質を好む人は、今でもレコードを購入して聴いています。また、個人使用でDVDコピーをする人も多くいます。昔の記録や思い出の音源などは、ディスクに残すことによって確実に保管ができるからです。

フォーマットの変化

【音楽フォーマットの進化】

 

音楽メディアの進化は、ファイルフォーマットつまり保存形式の進化の歴史でもあります。CDの歴史がスタートしたことによって、フォーマットが劇的に変化したことが分かるはずです。音楽をどのように録音するかは、その媒体によって大きく変わってきました。

 

蓄音機やレコードの時代は、針が溝に付けられた凹凸に触れ、その振動を音として再現する仕組みでした。完全に物理的な形式だったわけです。

 

それが、カセットテープを始めとするテープの時代になると、磁気によって電気信号を記録して、それをプレーヤーで再度変換し、音楽として再生する仕組みとなっていきます。しかし、この時代まではまだアナログ信号での録音でした。

 

その後、CDの歴史が始まると、今度はデジタル音源になります。樹脂に焼き付けたマークによって、レーザー光が読み取りを行います。記録はデジタル方式です。つまり、音波を一度デジタル化して記録し、再度読み取りの時に、デジタル信号を音に変換するのです。CDの歴史と共に、フォーマットはデジタルへと大きく舵を切ります。

 

【CDの歴史とデジタルフォーマットの進化】
音楽用フォーマットはCDの登場によってデジタル化していくわけですが、その後も大きな変化をしていきます。

 

音楽CDで使われるフォーマットは「オーディオCD」と呼ばれるものです。とても音質が良いのですが、データ容量が大きくなる傾向があります。インターネットによる音楽配信や、大量の楽曲の保存には向かないのが難点です。

 

そのため、続々とファイルを圧縮できる、すなわちデータ容量を小さくできるフォーマットが開発されていきます。特に重要なのがMP3です。オーディオCDと比べると、データのサイズを10分の1くらいに圧縮でき、それでいて、音質はほぼCDと変わらないレベルを保つことができます。ジャケットの写真や歌詞を添付できることも特徴です。このMP3の普及によって、一気にインターネット上での音楽配信やダウンロード視聴が一般的になっていきました。

 

その後も、AACなどの音楽ファイル形式が出てきています。AACは多少データサイズが大きいものの、より音質が良いことで知られています。

 

圧縮できるフォーマットによって、たくさんの楽曲を保存できるようになったのは特筆すべきポイントでしょう。DVDコピーでは、こうしたファイル形式で大量の記録を保管できます。思い出の記録を個人的に残しておくのに最適です。